みなさん評価は高いようですが、私は不発だったと思います。
わたしは商売柄、次の不安からこの本を買いました。「Googleは果たして新しい権力になるのか」と。
しかし語られているのは、建築や都市デザインの話ばかり。たしかにポストモダン建築については総括が必要でしょう。マーケッティングの調査結果が建築を凡庸にしているという指摘もするどい。しかしこういっては何だけど、建築はたかが建築。気に入らなかったらその場所に行かなければいい。ダメな建築は人が寄り付かなくなって、メンテナンス不良であっというまに古びて立て替えられる。形あるものはやがて滅びるのです。
ところがネットワークは違う。姿は見えず、形もなく、これから先人類が滅びるまでネットワークは生き続けるでしょう。そのような深刻な問題意識が共同討議のパネラーには希薄で、私の問題意識とはかなりはなれたところで議論が進んで、結局は先細りになって終わってしまったように思えます。
一方収録されたエッセーにはネット上の権力という問題意識ははっきり表れているのですが、ハードウェア上に固定化された権力を、ネットのコミュニケーションの力によってフィードバックすることで緩和する、という予定調和的な結論しか見出されていません。
ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)が告発するアメリカの現状を見れば、問題はすでに権力が自由を抑圧するのをいかにして避けられるかというレベルではなく、いかにして見えない搾取からのがれて適正な資源配分を行うか、というところにあるでしょう。にもかかわらず経済問題についての視点はゼロ、編者たちの意識はインターネットのダイナミズムに安住しているようです。
巻末のおまけについている「東・宮台、北米講演旅行レポート」では「『批評空間』はもう古い、これからはオタク批評の時代だ」と言上げしているようですが、私は「何をのんきなことを」といいたくなりました。広告してまわれば評価が上がるというものではありません。はたして20年後、『思想地図』は『批評空間』と同列に論じられているでしょうか。