表題のとおり、加賀・能登の生んだ十五人の優れた思想家を紹介したものであるが、季刊雑誌に連載したものを集めたという事情からもわかるように、思想の内容に立ち入るものではなく、その生涯の軌跡をたどる伝記的なアプローチである。だから、表題からその内容が推測される、そのままであると言ってよい。ただし本書は、表現の平易さとは裏腹に、それぞれが短いながらも、随所に深い洞察を示す優れた評伝になっているところがすばらしい。つまり、生涯をさまざまな伝記的な事実の列挙とエピソードで解説するというだけにとどまらず、思想的な議論に踏み込まずに、その思想家の思想的な格闘の根本にある「実存の深層」を浮き上がらせてくることに、かなりの部分成功しているということができる。それはひとえに著者の真摯な姿勢と、先達に対する純粋な敬意に由来するものであろう。ともかく、本書は有名な思想家に関しては、そのあまり知られていないエピソードを通じて新たな視点を示し、名前だけが有名な思想家に関しては、その生涯と人物の見事な紹介をなし、さらに(ここが一番すばらしいところなのであるが)今日では忘れられてしまった思想家を、忘却の歴史の彼方からもう一度呼び起こし、改めて注目するように誘ってくれる。ぜひ、一読をお薦めする。