本書は、著者の視点から、経済学に多大な貢献をした研究者の生き様・思想・研究内容を振り返ることにより、経済学において現実を反映した理論を構築するためには、社会学的議論を導入する必要があることを主張するものである。
経済学だけでは、何故、現実の経済を分析するのに足りないのか。この点について、過去の著名な研究者を振り返ることにより、経済学が貢献したこと、それが持っている欠点として耐久財のジレンマ・セーの法則の導入、経済学と社会科学の諸領域との統合・科学化を、順を追って明らかにする。
第一部では、経済学の中心的な分析視点、限界分析の祖師としてのリカード、それを継承しているとみるワルラス・シュンペーター・ヒックス・ヴィクセルなどを通して、耐久財のジレンマ・セーの法則・価格機能の不完全性などが指摘され、必然的に社会諸科学との接合の必要性が説かれる。それを受けて第二部では、社会学的視点を経済分析に取り入れた研究者として、マルクス・ウェーバー・パレートが紹介される。特に、社会的効率性の追求=パレート最適を提示したパレートが、実は経済分析に社会学的視点を導入することを試みていた人物であった、という点は興味深い。第三部では、極端な自由主義路線、すなわち限界分析を中心に添える経済学を経済政策に取り入れたミーゼスの紹介。最後に大御所として、現実を反映した理論を構築しているものとしてケインズ(一般理論)を紹介する。
本書は、経済史にあたるが、単純な時系列的記述に終始しない。それは、著者の独自の視点で近代経済学を分析しようとする表れであり、そこには、著者独自の論理展開がある。よって、得てしてバラバラに勉強されがちな個々の経済学者の業績・その意味を、一つの体型だった近代経済学に転換することに成功しており、経済学をトータルとして理解できるようになっている。そのため、研究者の業績順に紹介される内容ではなくなっているところが特徴的。
とにかく、勉強になる良書である。