第一部が岡村美穂子氏のエッセイとインタビュー、第二部が上田閑照氏のエッセイと大拙氏との対談が収録されています。大拙氏の妻であったビアトリス夫人が亡くなったあと、その亡き夫人が天国から呼び使わせたかのように大拙氏の秘書となり身の回りの世話をし、氏が81歳から96歳で永眠するまでの間師事されたというか献身されという。親子ほども違う年齢を越えての深い心の交流が偲ばれる好編です。氏の声が聞こえ、姿が思い浮かんで大拙氏の人柄が素直に伝わってきます。高齢にして欧米の各地へ歴訪し、東洋の真髄を伝えるべく精力的に巡る大拙氏にとって美穂子氏はいかに心の拠りどころであったことか、もし美穂子氏がいなければ大拙氏の偉業もなかったかもしれません。
また上田氏の対談では禅が形式化していることを慨嘆されています。禅はもっと創造的でなければならないと。40年前も今も変わっていないようです。凡庸を承知の上で言うけれど、今大拙氏が生きていたら、この世をどう思われるでしょうね?
『鈴木先生は、死んでからどうなるのか、知りたいと思われたことはございませんか』この質問(死後の世界について)に対して、先生はひとりごとのように、『それより、今、ここに在ることはどうなのかいナ・・・。死んでからでは、遅くはないか?』
いいじゃないですか、大拙氏の声が聞こえるようです。
神秘というものはこの世にしかない。漂々茫々でありながら、ある確たる境地に達している、そんな大拙氏に興味がある方は是非入門書として一読を。写真も豊富に収録されています。