本書は著者が昨年(08年)8月上旬に韓国を訪れた際の滞在記(ルポルタージュ)である。全体的に読みやすさを重視し、豊富な写真や欄外の用語解説など、初心者を意識した構成となっており、韓国でベストセラーとなった「88万ウォン世代」の著者、ウソックン氏へのインタビューも収録されている。また、取材対象も多岐に渡り、外国人労働者、スクォッティング(建物占拠)、兵役拒否者など、非正規問題を取り囲む様々な問題についても触れており、多角的な観点から、韓国の「今」を知ることができる。取材期間は約1週間と短めだが、入念な下調べと計画性がそれを補っており、日頃、講演やメディア出演などで忙しい著者の、最大限に努力した痕が伺える。
韓国において正社員(または公務員)とは、終身雇用と所得保障を約束された既得権層であり、景気の変動で煽りを受けるのは、その時代に社会に送り出された若者たちだ。その状況は日本の、いわゆる「ロストジェネレーション」と酷似しており、「日本と同じことが起きている」という著者の言葉は、決して誇張とは言えないだろう。
著者が伝える独特の臨場感や、現場でしか得られない生の声は、日本の労働運動に関わるものにとっては興味深く、参考になる部分も多い。しかし、それらの運動と関わらない読者にとっては、理解不能な部分も多く、参考にならないと感じてしまうかもしれない。本書から価値を見出すためには、最低限、既に日本の労働運動と関わっているか、もしくは「関わりたい」と思っていることが必要だろう。