著者は、スリランカ生まれ、35歳で来日後30年間日本で上座仏教の普及活動を行っている「スリランカ上座仏教長老」だそうだ。
本書は、『怒らないこと』(2006年 サンガ)の続編だが、本書だけで完結しているので、前著を読んでいなくても充分理解できる。
内容的には四部構成となっており、第一部では、大前提として「生きることは苦である」という仏教的人生観について述べ、第二部では、仏教が取り上げている10種類の「怒り」について順次説明していく。第三部では、「そもそも『自我』なんてものは概念的なものに過ぎない」とサトリへの一歩を踏み出し、第四部では、自我が「実在」するものではないとしたら導かれるであろう結論について述べている。
前著も本書も大変読みやすい本なのだが、書かれている内容は上座仏教の教義そのものである。前著が「怒ってはいけない」という話そのものを取り上げていたのに対して、本書ではその背景にある仏教的なものの見方や考え方に焦点を当てている。そういう意味で、意外と「理屈っぽい」本。
たぶん本書のような本を手に取る人が求めているのは、「ちょっと心を楽にするための感じ方のコツ」みたいなものだろうと思う。しかし、前著も本書も「怒りに対する対症療法はますます怒りを増幅させる」としていて、「『心を楽にするウマいやり方』なんてものは存在しない!」とかなり激しく書かれている。ところが、前著はそういった激しさが感じられないようにかなり配慮された本だったため、僕としてはその主張がストレートに伝わってこない本でもあった。本書では、背後にある考え方そのものを予備知識のない一般読者に向けて易しく解説してくれているので、前著に感じた疑問点はだいぶ解消された。
具体的な瞑想の方法などについて書かれた本があれば読んでみたいと思う。