「文章教室」「道化師の恋」の桜子や「小春日和」「彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄」の桃子たちにまた会えるなんて!すごいサプライズ。ファンとしては、今年一番の大収穫だ。“目白四部作”とその周辺については、あまり好きだったものだから、もう登場人物と、現実の友人知人の実話エピソードが混乱するほどで、その「続き」が読めるなんて!「タマや」の夏之さんとアレックスが登場した時には、涙が出そうに。かつて夏之さんのつくった帆立缶とコーンとキュウリのマヨあえ手抜きサラダはタマサラダという名で、今やうちの定番だよ。
……と、何度も本棚に駆け寄りつつ読んだ。脳内がマッチョなキモいオヤジたちのリアルさは相変わらずで、作中の建築家が知人に配る印刷物「よゆう通信」の“しゃれた”文章を読みながら、つい何度も「ここ読んで!いるよねーこういう人」と家人を呼びつけてしまうものだから、なかなか読み終わらず、でも、一分でも一秒でも長く読んでいたい。もう、めろめろ。
この小説の中心人物となっている、手紙魔の老嬢アキコさんは、これもまた、いるいる、こういう人はいるよねー、という自己オールオッケーな言動に満ちていて、桃子のおばさんなんかからすると、げっ……という感じの女性なんだけど、読み進むうちに、なんだかかわいいような気がしてくるから不思議。(実際にいたら困った人だと思うが)女は特?それとも多少なりとも自分も似たようなことをしていて、点が甘くなるのか?
中野勉が他人の文章を自分の文章と間違えられて逡巡するラストは、これもファンにはたまらない。桜子と恋人・善彦の“惨めな別れ方”(もらった手紙や当時の日記はシュレッターにかけられて「ピーコック・ストア」のレジ袋に入れて捨てられる!)についても知りたいし、近い将来、桜子が書くであろう「knock,knock!」という小説もぜひ読みたい。ファン魂に火が点いたわ。