貧しい夫婦と二人の兄妹。ありがとうを言わない妻と、ありがとうを言わせたくて妻の欲しがるものを次々と与える領主。恐ろしい家庭教師と、賢明な魔女。片目を失ったカラス。これが、この本の登場人物です。
この本は、偶然知ったもので、レビューはないしもちろん現物も見たこともなく、この作者の他の本も読んだことなく、買うまでにかなり迷いました。けど、タイトルが異様に気になり、結局タイトルだけで買ってしまいましたが、買って正解だったと思っています。
絵画でも、彫刻・陶芸でも、初期のものと後期のものってかなり変わってきますよね。後期になればなるほど洗練されて華やかになっていきます。全盛期といわれるものは、どれもはっとするような美しさがあります。それが過ぎると悪趣味に近くなり、ごちゃごちゃとなっていきます。それに比べ初期のものは、洗練さは少ないかもしれませんが、シンプルで稚拙な中にも、無視できない力強さというか、本質を捉えた何かがあるように思います。
この本にも、初期の時代でしか表せられないような何かがあります。実際には、この本が、ファンタジーの枠組みの中でどの時代として位置づけられているか解りませんし、ファンタジーの枠でくくってよいものかもはっきりしませんが、とりあえず今の時代の本では表せられないものを持っています。
けして、派手な展開ではありません。どちらかと言わなくても、はっきりダークな色調の本です。子供向きとも言いがたいでしょう。だけど、本当にファンタジーを好きな方に、一度は読んでもらいたい本です。原点というか、ソースというか、ボキャブラリーが貧困なためはっきりは言えないんですが、とりあえず『何か』があります。
うーん、強いて言うなら『クラバート』に似てるかしら?そうですね、クラバート好きな人ならきっと好きになれると思います。