昨今、官僚は「悪」というイメージが強くなり「官僚主導」から「脱官僚」へというような政治的フレーズが支持を受ける時代となっている。しかし、この悪者のようにされている「官僚」はいつ誕生したのかと考えると、つい100数十年前の明治維新以降であり、彼らがどこから来たのかという素朴な疑問を抱かずにいられない。
そんな疑問を解決してくれたのが本書である。幕末の志士たちが明治政府を「創業」し、以降官僚として新政府の基礎を築き上げた。しかし、幕末の志士の中には、志士的資質から脱却できずに、新政府を去ったり、反乱を起こしたりした。この前者の代表的人物は大久保利通であり、後者は西郷隆盛や木戸孝允であろう。そんな彼らの志士から官僚への変貌の様子を分かり易く本書では述べている。
本書の構成は、
第一章「新首都で新政を」:京都から東京へと首都が奠都(てんと)した経緯を紹介(遷都(せんと)ではない点が興味深い)
第二章「維新官僚とその政治」:幕末の志士が、各大名の家臣から朝臣へと変化していき、どのように新政府の中枢に食い込んでいくか
第三章「明治の志士とその行動」:幕末の志士と言うが、明治の志士とは言わない理由、志士的資質を捨てられなかった者たちの反逆
第四章「政治と私の空間」:明治政治史の裏舞台の紹介、特に大久保や木戸、西郷たちの女性関係について
第五章「志士の発想と官僚の論理」:大久保が士族の反乱よりも民衆の一揆を怖がった理由(官僚としての国家経営の視点が理解できる。)
現代の官僚と明治の官僚の発想や意識は、だいぶ違うだろうが、しかしその根底には通じるものがあると、本書を読んで感じた。官僚とは何かを知る上で、歴史的背景を知れる良書であると思う。