流石日本が誇る伝統的な話芸ですね。
映画では何十人ものキャストが配役を担当し監督や制作陣にプロデュースされながら制作されていきますが,噺家は一人で制作からキャストまでこなしてしまいます。
何度も撮り直し,編集を加えて作品として上映される映画と,高座で演じる落語を比較することは出来ないと思いますが,噺家が前にするのはカメラではなく生身の観客たちということで,反応がすぐに返ってくる分,常に真剣勝負という感じで厳しいような気がします。
本作のネタは実際には有り得ない事件だと思いますが,会館職員と,利用者との接点が,うわべだけのものから,人間的なものに変わっていく過程を人情味豊かに表現した傑作だと思います。
ただ,動かない高座の映像では視聴者に申し訳ないとでも思ったのか,やたら映像が動き,落語としての楽しみが半減しています。
せめてズームを使う程度にとどめ,じっくりと師匠の噺を聞かせたほうが良かったと思います。
映画をご覧になった方は,結構原作に忠実だなと感じられたと思いますが,実際のコーラス部分を除いては,自分の頭の中で映像を創造できる分,落語のほうが楽しめると思います。
ただ,映画には志の輔師匠もキャストとして出演されておりますし,両方ご覧になられてはいかがでしょうか。