六部作になっており、表題作「忍ぶ川」は、結婚を考える男性の自らの「血」ののろいを、相手に伝えることから始まる。
卒論を控えた大学生である主人公が(続編の「初夜」で早稲田大学の学生とわかる)小料理屋「忍ぶ川」の店員志乃に、
郷里の兄弟たちが神経薄弱の呪いを受け、自殺を図っていることを
告げる。
「初夜」では、彼らが夫婦として、子供を生むということ、すなわち自らののろわれた遺伝子を引き継ぐ存在を生み出す恐怖ということに対して、主人公が真っ向から向かう。
彼(おそらく三浦哲郎本人の回想に近い)が血液の因縁から解放されたのは、新たな自分の血を生み出すことだったのだろう。
夫婦は、二度目の受胎で出産を決意し、将来への希望を見出す。
全体に明るい作品ではないが、将来への希望を常に持つことのできる、
秀作だと思う。