まったく知らない世界をこの本で知りました。もっとも、私が知らないだけで、世の中の権力と金が集まるところでは日々、切った張ったがあるのでしょうが…。つくづく自分がモノを知らない小市民であることを思い知らされます。
本書でかなりの分量が割かれているバブル期の金回りの話には唖然としました。私は当時、小学生か中学生だったので、バブルというものを肌で感じることはありませんでした。しかし、バブルの真っただ中に何憶という金が手元を行き交っていた人々の話には実感がこもっていて、その狂乱した景気の雰囲気と、一方で背筋の凍るような恐怖とを感じました。宮崎氏が「「所詮カネで動く人間なんて駄目なんだ」とか思ってたんです(中略)ところが、バブルというのは、その考え方を根本から変えるんです。(中略)カネで動かない人間のほうが嘘をついているんじゃないかと思い始めました(P.65-66)」という感想を述べておられますが、桁外れの大金の前では人の価値観は往々にして壊れるものなのだということが私にも何とはなしに分かりました。
田中氏の話で「なるほど」と思ったのは、プロとしての身持ちの固さです。田中氏は環境設備メーカー・タクマの顧問弁護士として、仕手戦を仕掛けてきた相手と相対します。相手が田中氏を買収しようとし、女に誘わせて弱みを握ろうとします。最終的に、田中氏は全ての攻撃を防ぎ、顧問先を守り切ります。「とにかくワシと寝させて、なんでもええから弱みを握って、ワシをタクマから引きずり降ろしたい。あの先生がいなかったら、なんとかなるんだけれども、と。なんでもいいから、スキャンダル作ってなんとか引きずり降ろしたいと(P.212)」という田中氏の感想から透けて見える争いの激しさにはゾッとさせられます。同時に、プロとして自分の身を守るにはとにかく身持ちを固くしなくてはいけないということを教えてもらいました。