心理学入門の本として、これは非常におもしろい。形式としては、著名な心理学説がいかにして誕生したのか、その成立事情をわかりやすく簡潔に紹介しながら、それぞれの学説の意義を解説していき、さらに後続の批判的な議論に言及し、また諸学説の応用のされ方にも触れる、という流れである。ヒトの心の真理に迫ろうとする著者の語り方がとても魅力的であるし、翻訳もこなれていて読みやすいので、全40ケースと紹介される研究がちょと多いけれど、最後まで飽きずに読み通せ、勉強になった。
なにより、仮説を実証するための様々な実験に関する記述が詳しくて、興味深かった。ある問いに答えるために、どのような実験方法が開発されてきたのか、これを知ると心理学という学問の考え方がよく理解できるようになるし、また「心」を読み解くための接近方法の多様さそれ自体が、人間存在の奥深さを感じさせてくれるのが刺激的である。一口に「実験」といっても、ネズミやサルなどの動物を使った実験や、擬似環境における被験者の行動の観察などだけではなく、人間のセックスに対する反応を調べるためにカップルの協力をつのって実際に性行為を行なわせたり、社会的な人種偏見と現実の対人評価のズレを明らかにするためにある中国人夫婦に全国各地のホテルを訪問させたりするなど、やり方が色々あるんだな、と驚いた。