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イギリスの心理学研究者が書いた本書は、心理学が孕みうる社会的問題を浅く広く論じている。心理テストの妥当性や信頼性等、心理学を専攻する者なら遅かれ早かれ学ぶような基礎的な話題も適宜まじえながら、戦争、プロパガンダ、マーケティング、人種差別、性差別、人間観等、政治・経済・文化と心理学の現代における関わりを、ごく簡単に、概観している。
記述は平易で、専門用語は簡単な定義か説明があり、たまにユーモアもまじえてあるので、心理学の基礎知識があればストレスなく読めるだろうし、なくても苦労はしないだろう。
人名索引、事項索引、参考文献、用語解説に計34ページが割かれていて、読者の補完的・発展的な学習・研究を促す形になっており、好印象を持った。また、心理学科でしっかり学んだつもりの私も知らなかった話題(行動主義者のJ.B.ワトソンは大学に就職できず、マーケティング会社に入り心理学の知見をマーケティングに応用しつつ副社長まで上り詰めた等)もいくつか触れられており、値段分の元は取れたと思う。
本書の意義の大きさに鑑み星5つとしたかったが、
1. 言及される概念・理論・仮説は社会心理学のそれが大半であり、臨床心理学、法心理学、認知科学、発達心理学等他領域の話題は殆どあるいは全く触れられていない。また統計学も触れられていないに等しい(この本だけで因子分析がどんなものか理解できる初学者はいないだろう)。
2. それぞれの論点の説明や考察がシンプル過ぎ、掘り下げ方が足りない感がある。制度的考察もほとんどない。社会学・ジャーナリズムにも、科学哲学にもなり得ておらず、半端と言えば半端である。
という理由で星1つマイナス。
心理学の社会的意義を考えてみたい、心理学を応用した権力行使から極力身を守りたい、心理学の目的や趣旨はそもそもどんなものかイメージを持ちたい、というような人が1冊目として手に取ると有用な本かもしれない。
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