何故、この方は何時も自分の凄さをところどころにひけらかしてしまうのだろうか。それさえなければ、何も文句はないのだが。村上教授は、心理の人間の中でも変わり者であることは間違いないだろう。歯に衣着せぬ言い方は小気味いいし、心理学にまつわる間違った信仰や妄想をバサバサと切り捨てる様は、正直気分がいいのだが、彼のさり気ない自分自慢の箇所だけは、読んでいて多少気分が悪くなる。これは、大抵の人間が思うだろう。他の心理学者や一般人を見下した姿勢は、あまり気持ちのいいものではない。
今後、臨床心理に求められているのは、EBMとNBMの統合であろう。科学的な認知行動療法を核に置き、社会構成主義的な心理療法、システムズアプローチに基づく家族療法などを織り交ぜながら、どのように折り合いをつけていくかが課題と言ってもいい。その意味で言えば、村上教授はNBMにはあまり関心がないようだ。そこは少し残念な気がする。数字の説得力は絶大ではあるが、それが決して全てではないし、人の心を数値化するという考え自体に、既にある種の無理があるのだから。ただ、未だ旧帝の医局や心理の研究室にさえ、カビが生えた分析心理学や精神分析にすがりついている残念な教授達が存在する中、彼のようにズバズバと心理の蒙をはらしてくれる存在は貴重ではある。今後も、一般人も学者もどちらが読んでも楽しめるような、良書を彼には期待したい。