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例えば、ローゼンハンの精神医学診断実験。彼は70年代初め、精神科医がどの程度「狂気」と「正気」を正しく診断できるのかに疑問を持ち、8人の仲間と共に精神科医が自分たちの正気を見抜けるか、精神病の振りをして精神病院に潜入した。精神科医たちは見事にだまされ、最初の症状(演技)にとらわれ、その後は正気に振る舞った偽患者たちの「正常さ」に気付くことはできなかった。
著者自身も病院に潜入する。「ドサッ」という音が聞こえるんです、という幻聴を訴えて。
他に、スキナーのオペラント条件付け、ミルグラムの電気ショック実験、ダーリーとラタネの緊急事態介入実験など。
著者の先入観や実験に対する好悪の感情が余りにストレートに記述に反映されていることは少々問題か。
ロフタスは記憶とは、ビデオに記録されたように正確で、色あせることなく脳に残っている、という神話を切り崩す実験を行った。例えば、彼女は学生たちに身近な人に嘘の記憶を植え付けるという課題を出した。子供時代のエピソードを聞きながら、「ショッピングモールで迷子になった」という嘘の話を思い出してもらう。すると多くの人が、詳細な物語を自分で作り出し、それを真実と信じていた。
彼女の実験はPTSDに絡む、「抑圧されたトラウマの記憶」という現象に反対の立場を取り、論敵ハーマンらとの激しい論争がある。
その辺を冷静に記述してくれれば良いのだが、ロフタスに対する反感が強いのか、「ロフタスの笑い声は耳障りで、声の中にはわずかに人を見下す響きがある」などと書いてしまう。
この本は正確な科学ノンフィクションではなく、心理実験を話題の中心にしたエッセイだ。こんな実験があったのかと知識を得て、専門的文献をあたるべきである。その導入として読みやすく、価値ある本だと感ずる。
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