普段は理系の本はほとんど読まないが、知人の薦めで読んでみた。自分が知らなかった最近の科学的な「流行」が随所に盛り込まれている。そういう知識に触れるという意味でのおもしろさだけでなく、卑近なものの理解からぐっと遠く離れた先の未来までが、この本の延長線上に見えて来て、わくわくするような知的刺激を受ける。
このわくわく感は、目の焦点の合わせ方を変えることによって見えてくる3Dの絵に似ている。クイズを解くようにして文中の図を理解しながらひとつひとつ読み進んで行くと、目の前の具体的事象である細かい模様がまず見えてくる。そのあと、コンピュータの中の人工世界のシミュレーションを垣間見ることによって、それまで気づかなかった焦点の合わせ方に気づく。すると、それまでは想像できなかったような遠い未来や、言葉の構造や、心の仕組みらしき立体映像が見えてくるのだ。
著者はシミュレーションの延長線上にあるものとして、「現在の我々では想像もできないような心の段階が待っていると期待したくなる」と言う。ところが、同時にその一文の中に「(運良く人類がそこまで滅びないならば)」などというカッコ付の節を挟み込む。無限大の先に何かがありそうなこと、それを見据えた研究があることを知るだけでも、なんだか楽しくなってくる。