ぼく(京京)はまだ小学生だが、両親の不仲からおじいさんのところへ一時、預けられる。そこで体験したことは・・・。
この一家は京劇俳優の名家である。映画も背景に中国の田園や都市の風景とともに京劇が美しい色彩で物語を支えている。
名優のおじいさん李漢亭とその愛人と周囲からも認められている蓮姑の長年の堆積した愛情の複雑な絡みが、孫である京京のヤンチャぶりとバランスをとっている。
アクションらしいアクションは唯一京劇の舞台だけで、時間はゆるゆると進む。最後まで見るのに何度眠ってしまったことか。しかし、その眠りのなんと気持ちのいいことか!
アジアの映画にハマる一因にこの誘眠作用があるのかもしれない。
中国映画は、大陸、台湾、香港どの風土から生み出された作品からも「のどかさ」が醸しだされている。それは裏返してみれば、それほど現実の中国社会が過酷なものであるからなのか。中国の歴史には途方もない権力者の残忍性と民への圧制が堆積している。それを凌いで生き抜いてきた民の智恵と力がこのしなやかに柔らかい、丸い世界なのだろう。現代に生きる日本のわたしはその果実の甘味さに惹かれて中国映画に対面する。
とりわけ本作品は安眠を誘うのだ。子どものころの時間感覚を思い起こし、じきにやってくる老いを肌に感じながら。