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「心の影」でペンローズが注意を促すのは「数学的理解力」と「計算システム」のちがいである。理解力は問題解決のアルゴリズムを見つけ、心の代行をするのだが、これこそが人工知能には不可能なものなのだ。たとえば、次のような例。1に6の倍数を足した7,19,37…などを六角形数といい、平面上で六角形の配列に並べることができる。これを1+7+19+37のように足し合わせいくと、六角形数の!!和は8,27,64,125というような立方数になる。このことは球を立方体状に配列した図を描けばわかる、配列は六角形に見えるのだから!
人間の数学的理解力はしばしば直観的であるように見えるが、数学的推論の方法としても完全に健全である。理解力を計算的システムに還元することは不可能だ(カオスやランダムは近似的でしかない)。だから意識は計算不可能な物理法則からできている。1巻の議論はここまでで、2巻では実際に計算不可能なふるまいをする量子系に、心の実在を求めていくことになるのだという。なんとも楽しみだ。
上巻で論理数学をカバーした著者が、下巻では物理学に舞台を移し、量子力学に関する有名なパラドックスを切り口として、魅力ある議論を展開します。著者はパラドックスを2つに分類します。「EPRパラドックス」はZミステリーと呼び、確立された事実として受け入れますが、「シュレーディンガーの猫」はXミステリーとして、断固受け入れません。ここからはペンローズの独壇場で、重力による状態ベクトル収縮の理論、そして微小管内の収縮と意識との関連に迫っています。このあたりは推理小説の犯人探しをしているようなスリリングな展開です(最も真犯人はまだ検挙されませんが)。
前著「皇帝の新しい心」でも感じましたが、翻訳の素晴らしさもペンローズの世界に引き込まれる大きな理由のひとつです(ペンローズが日本語で書いているような)。