心に「狂い」を生じた実際の患者のありようを、治療例を通してリアルに書き出した一冊。扱っている疾患は、「アルコール依存」「統合失調症」などのメジャーなものから、「パラノイア」や「摂食障害」など、幅広く扱っているのが特徴。いずれの病気も、患者との会話例や実際の事件を通して、「心が異常をきたすとはどういうことか」を問いかける。また、そういった患者のケースを通して、逆に「正常」であるとはどういうことなのかを考えるきっかけも与えてくれる。
本書が他書と違って特徴的なのは、近年メディアを通して認知度が高まった、「精神鑑定」の信憑性についての議論がなされていることである。凶悪な事件を起こした加害者が「心に狂い」を持っていたと鑑定される例がある。果たして精神を「正しく」鑑定し、裁きの場に持ち込むことに問題はないのだろうか? 本書では、過去の実際の鑑定例を振り返りつつ、人間の心を判定するということの難しさを読者に考えさせる。
一貫して現実のケースをリアルに伝えるという姿勢が貫かれており、統一感があって読みやすい。扱っている内容は決して軽いものではないが、精神科というジャンルを本書を通して見てみることをお奨めする。