本書では「論語」のエッセンスを、力のある読み下し文、現代語訳、解説、を通して孔子の言葉に触れることができる。どことなく硬いイメージがある「論語」だが、この本は気軽にその世界に連れて行ってくれる。
多くは非常に単純な言葉だが、単純だからこそ力があり、読者に強く訴えかけてくる。いくつか例を引こう。
義を見て為ざるは、勇なきなり。
<人として行うべきことをわかっていながら、それをしないのは臆病者である>
子曰く、君子は諸(こ)れを己に求む。小人は諸れを人に求む。
<人格者というのは、何事にも責任を自分に求める。ちっぽけな人間は、すぐ責任を他人に押しつけるものだ>
何千年も前の言葉だが、現代に欠けている真理をついたものであるように感じる。常に心に抱いておきたいことばである。
論語はまた指導者の心得を説いたものだということもできる。上に立つもの、教えるものとして心にとめておきたい言葉も数多く掲載されている。再び本書から例を引く。
子曰く、君子は言を以(もっ)て人を挙げず、人を以て言を廃せず。
<優れた指導者は、立派なことを言うからといって抜擢したりはしない。普段の行いが悪いからといって意見を無視したりはしない>
子曰く、君子は人の美を成す。人の悪を成さず。小人は是れに反す。
<君子は人の美点を伸ばしてやり、悪い点は出さぬようにしてやるものだ。小人はその反対である>
冒頭三十数ページに渡り、カラーで掲載されている武田双雲氏の書も必見。孔子の言葉を躍動する書で力強く伝えている。
高校の授業以来、「論語」に触れる機会がなかったが、改めて読むとはっとさせられる発見の連続であった。古きを温め、新しきを知る、そんな気持ちになる。