生き物の形質は環境と遺伝子の両方で決まり、そのどちらか一方でのみ決まるというものではない。これは体の形などについては素直に頷けるのだが、もう少し形があいまいな行動になるとどうもうさんくさくなる。浮気も全部遺伝子のせいだなどというのはそのような際たるものだ。この本はそのような「トンでも話」とは一線を画している。引用されている文献もNature, Scienceなどが中心で、科学的な実験の結果に裏打ちされた最新の成果が解説されているのである。行動と遺伝子に何らかの関係があっても本書で語られているようなDNAの特定の部位が特定の行動パターンに反映されるようなクリアな関係はないと思っていた私も思わずうなってしまった。本書は生物学的、とくに分子生物学についてのバックグラウンド(本文で説明があるが)がない人には少し読むのはしんどいかもしれないが、苦労する価値は十分ある。科学的な研究の進め方などについても非常に勉強になる。