この名著にいまさらレビューを書くのにはためらいがあるが、古典であるがためにレビュー数が少ないので、
若い世代向けに本書の内容を紹介する。
本書には「微分」と「積分」を主題として、高校数学のエッセンスがまことに丁寧に述べられている。
読者の頭には、それぞれの概念についての生き生きとしたイメージが湧いてくることだろう。
まず、関数のイメージが図や工夫された表記法を使って示される。連続、収束という概念や、
自然対数の底「e」の意味なども具体的に述べられる。
微分の章も、単なる微分のテクニックを紹介するのではない。三角関数を習うとき、円の一周の角度を2πとする
弧度法という角度計測法が導入されるが、その有難味も微分によってわかるのだ、と解説される。
全く同じ理由で、指数関数の底として10でなく「e」を選ぶのだ、ということに関しても深い納得が得られる。
関数の関数や逆関数についてもわかりやすい解説がある。dy/dx という微分記号は分数ではないが
「あたかも分数であるかのように」考えて計算してよいことが示される。
虚数i の意味がわかっても、e の i π 乗 というような指数の肩に虚数が乗った数の意味はよくわからない。
この点に関しても複素数のイメージと具体的計算が示される。
定積分の項では「内積」(=かけてたす)という計算が基本であることが説明される。
内積は、ベクトルや行列などでも登場する大切な計算である。この「かけてたす」という意味を表すために、
積分記号の末尾にdx が書かれるのだ、ということがよく理解できる。
読者はライプニッツの導入した記号の意味と便利さに思いをはせることになるだろう。
さらに「タテ割り」の定積分であるリーマン積分に対して、「ヨコ割り」の定積分であるルベーグ積分に言及がある点も
素晴らしい。読者が大学に進み、連続でない関数を積分する場面に出会ったとき、この説明を思い出すことだろう。
不定積分の項では、不定積分とは「逆微分」なのだ、だから、微分の公式を逆に使うのだ、と明快に述べられる。
主要な不定積分が具体的に示されるので、この項を読んだ後に読者は、それまで難しく見えていた不定積分が、
容易に計算できるようになっていることは間違いない。
最後に微分方程式についての章がある。数学の微積分と物理の力学を別々に勉強していると、どちらも、わかったような、
わからないような中途半端な気分のままにとどまってしまう。が、微積分を使って物理の問題を解く、という経験を経ると、
数学・物理の両方について「そういうことだったのか」と深い納得が得られる。この章は、その納得を得させてくれる。
本書は、一通り高校数学を学習した読者に対して、より確固とした数学の世界を思い描く力と、
より深く「わかった」という感覚を与えてくれる。