「どかーんと冷えちょるじゃろうねぇ、留置場は・・・」
「貴様においは殺せん。恨みのなか人しか殺せん種類たい」
「殺すなよ、榎津」
「とぉくへ・・・」「・・・はる」
20年以上たっても子供の頃の悪夢のように脳裏に鮮明に残っている場面の数々。さしたる深い動機がある訳でもなく男は罪を重ねていく。深層にあるものは父への憎しみかも知れないが、監督・今村昌平は決して断言はしようとはしていない。人間の心の暗黒部分を同じ人間が判るわけが無い、と突き放すかのように。魂の救いの手を差し伸べる慈母のような女と、その中に宿った我が子を男は自らの手で抹殺する。まるで天使の降臨を拒否するかのように。男の魂は死刑になった後も救われる事無くまさしく「どかーんと冷えた」永遠の煉獄を彷徨うのだろうか?それが神にすがっても救われない父と幸せとは無縁の妻に永遠の呪いを残す事の代償だったのか?恐るべき映画だ。「人間の業」をここまで描ききった作品は他に見た事がない。
総じて今村作品に相対するには体力がいりますが、本作はその最たるもの。未見の方は心してください。ちなみに劇中で事件当時のの映画館、と言う設定で在りし日の池袋文芸座が使われています。すげぇ、懐かしいですよ。