プロ野球の「黒い霧事件」で永久追放となった池永正明のことがずっと気になっていた。その真相が、こうして1冊の本になり、それに出合えたことを心から喜んでいる。池永について書かれた本のなかで最良の1冊であろうと思う。
プロ入りして5年間余りで103勝をあげ、生涯に300勝はできるといわれた池永正明。年俸1000万円のエースが、100万円のお金を受け取ったことで、プロ野球界から永久追放された。そのとき池永は23歳だった。先年、35年を経てようやく追放処分がとけた。
八百長試合はしていないと言う彼を、球界がそれほどまでに長く鎖につなぎとめた理由は何だったのか。著者はそこにプロ野球の暗部を覗く。
八百長試合はしていないと言う彼が、それほど長く沈黙を続けた理由は何だったのか。それこそが著者が知りたかったことだった。読者は本の最後に明かされる沈黙の理由を知ったとき、暗然とする。やはり彼は自分で自分を縛っていたのだ。その理由はまっとうなものなのか。それは読者につきつけられる問いである。
本書には2枚の写真が使われている。1枚は、マウンド上の力感溢れる投球フォームをうつしたもの。本文の途中に挿入されている。
もう1枚は最後にある。本書を読んできて、最後にあらわれる。本書を読んだ方なら皆そうだろうが、その写真のページを開いたとき、涙がとめどなく溢れる。
直木賞作家が小説を離れて、本書を書いてくれたことに感謝する。野球好きの人はもちろん、そうでない人にも是非読んでいただきたい。