全体的にとても読みやすく、旧体質の弁護士に対しては貴重な警鐘となっており、一読に値する。
しかしながら、残念なことに、著者のリサーチ不足と西村・長島大野・森濱田・アンダーソンといったいわゆる大手事務所の弁護士に対する偏見(というより嫉妬のようにも読める)は聞き捨てならない。
著者は大手事務所のクライアントに対する姿勢について『エリート弁護士。自分は先生であって、依頼者はその施しを受けるぐらいの感覚しか』(32頁)ないと断言する。しかも、上記の根拠として、「同僚が修習生から聞いた」という信頼性に疑問がつく事実を堂々と書いている。著者が批判する「ダメ弁」の杜撰な調査そものではないか。一流企業が、大規模事務所に依頼をするのには相応の理由がある。いくらサービス精神が旺盛でも、頭が悪い弁護士・専門性を持たない雑多な仕事しかできない弁護士に、企業の命運はまかせられない。また、大規模事務所間の競争は激化しており、仮に著者の夢想するところのホスピタリティーに欠ける弁護士がいれば、即座にパートナーから呼び出しを受け干されることだろう。著者の、大規模事務所への偏見は本書のいたるところにあふれており、納得しがたい(合格年齢から大手事務所へ入所できなかったとも推察される)。
さらに、良書の価値を損じているのが64-65頁。米国への留学を『ミーハー』と断じ、英語の勉強をするひまがあれば『もっと勉強せよ』と指弾する。日本がグローバル化し、企業の要求がボーダレスとなる中で、英語力は何よりも重要だ。また、米国への留学は、米国の最先端の法制を学ぶとともに、そこで培った人脈をクライアントに提供するという意義もあるのである。
買っていただきたい良い本ではあるが、この偏見については、公平の観点からも、レビューを返そうと考えた。