産業精神科医は企業に依頼を受け契約してその社員全体の精神の健康のために
治療、指導をするお医者さんである。
僕はこういう人は内科医としての修行も積んでいるといいなあと思っている。
本書はその「産業精神科医の著者が綴った治療体験と意見」である。
著者は自分の立場を次のように説明する。
「あえて批判を恐れずに言うならば、今の日本で重要なことは『一生懸命働く人が充分に報われ
努力を怠り医療福祉の社会システムを安直に利用するような心がけの人は許されてはならない』」
うーん。努力を怠っての結果なのか、安直だと断じられてもしょうがないのか、それを判断するのは
お医者さんなので〈決して上司や同僚ではならない)
これは正論であっても対外的には発信しなくても良い情報なのではないかと思う。
診察に来たクライアントにこっそり言えば済むことである。
筆者の提案するストレスの溜まらない雇用形態は次のようなものだ。
まず、労働に5段階の質的レベルを定める。
第一段階:誰でもできる単純作業などの中核労働レベル
第二段階:スキルが必要な基本労働レベル
第三段階:自律的に考え工夫し、働く期待労働レベル
第四段階:余人を持って代えがたい特殊な才能で、創造的な仕事をする拡張労働レベル
第五段階:経営者の期待や予測をはるかに越えた働きをする超越労働レベル
これらのレベルの中から、労働者の提供したいレベルと企業が求めるレベルをお互いに提示して
雇用契約を結ぶ。但しこの各労働レベル間の移動は流動的にする。
というものであるが、この方式を是非導入して欲しいと思う人は、
労働者や雇用者の中にどれほどいるのであろうか疑問である。
疑問点だけ列挙したが、他の項目では確かな識見が述べられている。