TV化されて大ブレークした作品。文豪柴田氏としては軽い冗談小説のつもりだったのだろうが、TV側の製作陣によって一躍人気時代劇シリーズになった。私もTVから入ったので、どうしてもTVとの比較になってしまうが、本作を読むと原作があるものに対してはほぼ忠実に映像化している事が分かる。グルメな怪母、麻佐女のため四苦八苦する斬九郎の姿は、文字で追っていてもやはり腹を抱える程おかしい。斬九郎役に渡辺謙を得たのは収穫だったが、麻佐女役に岸田今日子を得たのは大収穫だったのではないか。
TVと原作で一番異なると思ったのは、深川芸者蔦吉の扱いである。TVでは斬九郎に次ぐ準主役であるが、原作では端役に近い。TVでは映像的効果を重視したのであろう。若村麻由美がいい女っぷりを出していた。原作では侍と町人との垣根を越えた下町の人情の描写、そして斬九郎の裏家業における剣豪ぶりが見ものである。作者が柴田氏なのだから、この立ち回りシーンに迫力があるのは当然だろう。
それにしても、時にはニヒルに、時には情に厚く、時にはコミカルに、時には麻佐女にしてやられギャフンとなる斬九郎を演じきった渡辺謙は褒められて良い。