これは特定の個人への悪意やいやらしい下心等で書かれるようなよくある「暴露本」の類どころか寧ろ、落語協会分裂問題の真っ只中にいた噺家、しかも円生の直弟子本人によるドキュメンタリーだと感じられました。翻弄され続ける著者本人の激しい心境の変化と冷静に円生一門の他メンバーを観察する両極端の状態の両立が読み物としての緊張感をより強くする。勿論この緊張感は心地よいものです。
自然かつ詳細な現場描写は全くもって「ただの説明文」では終わらず、まるで自分が著者本人のように、あたかも自分がその落語協会分裂を経験するかのように引き込んでくれました。そして一気に読みきってしまいました。2回目以降も、読み物としても非常に興味深く読むことができる良書だと思います。