齋藤芽生さんは、東京芸術大学美術学部油画科常勤講師(女性初)という肩書を持つ画家です。今時、「女性初」という閉鎖的ともいえる「職場」があったことに驚きましたが、この作品集には良い意味で驚かされてばかりでした。
ある美術展で齋藤さんの作品と出会い、その風変わりで他に類をみない作風に惹かれました。偶然、彼女の最初の作品集と出会えたのは僥倖で、心おきなく彼女の描きたかった世界に没頭することができました。
あとがきに、作者のコメントがあり、本書の特徴を見事に言い表していましたので引用します。「『徒花図鑑』は、私が思いつくままに空想を働かせ、それら空想のものたちがこの世に存在するかのように図像で網羅した、架空の博物誌です。」とありました。
例えば23ページの「毛玉鶏頭」の筆者の説明では、「毛玉だらけの鶏頭。擦り切れたセーター姿の無精な女の家に咲く。」として表されていました。まさしく見たことのない鶏頭でした。豊かな発想と現代的な感覚、風刺や皮肉のスパイスも強烈で、それを具象化できる力量のある作家です。非凡さはページを繰るごとに感じますし、彼女の作品展を実際に見たいと思わせる魅力が伝わってきました。
本書のテーマです。花(徒花図鑑、徒花園、毒花図鑑)、窓(晒野団地入居案内、晒野団地四畳半詣)、旅(地霊に宿られた花輪、名もなき東京人のための花輪、瑣事鑑、密愛村)。
現代最高の美術評論家であり大原美術館館長の高階秀爾氏の「鮮烈な詩情の世界」は是非お読みください。齋藤さんの作品の特徴を見事に捉えた解説でした。
茨城大学教授の小泉晋弥氏の「齋藤芽生の花・窓・旅の行方」も実に参考になりました。審美眼をもつ批評家の鋭い視線が作品に注がれた瞬間、見えていないものが見えたようです。また帯の推薦が大竹伸朗氏、山下裕二氏ですので、それだけで本書の価値は計れると思います。