著者が序文で書いているように、「日本にいる限り、誰もが幻影のアメリカしか見ない」という観点には共感できる。社会の健全性は日米を比較した場合、マナーの良さや人間的な生活面での社会性は、ここ30年で日米格差は酷くなっている。そうした前提に立ちながらも、サブタイトルが補足する通りに「自滅するアメリカ、堕落する日本」という仮説的な現状分析結果には納得する面もある。
どこの国でも、旅行だけではその国の人々の生活観は判らない。体感するには、やはり数か月以上アパートを借りて、生活してみる以外には平均的な目線はできない。著者は、延べ2年に渡る滞米経験を20年間隔で経験したことで、アメリカの変化を、歴史として体感できる基盤を作った。評者にも似たインターバルで渡米調査を繰り返している関係で、共感する面が多数ある一方で、社会科学者的な精緻な分析に欠けて、多少の不満もあるが、大筋において文学者の直観力とでも云える感性的認識は的中しているとも云える。
その一方で、日本文化の柔軟性と孤立性を逆張して世界再生が可能とする見方にも、文学者の、叙事詩的感性の洞察で、引用される岡倉天心ら親米派の脱欧入亜の思想を巧みに取り込んで、モノづくりで輸出でしか経済を維持できない日本の閉塞感を打ち破ろうと試みる提言は興味深い。
刺激的な1冊である、反米派にも親米派にも読んでもらいたい議論である。