主人公はユーラシア大陸の東の日昇るところの、太平洋が果てる西の日沈むところに住む王子で名をテツヒトという。王子といっても既に30を過ぎており決して若くはない。首都の「森の館」に半ば幽閉状態で暮らしており、后も恋人もおらず、自分の存在意義を見出せず、読書と映画と酒に慰められる日々を送っている。
こんな王子が館をお供のコレミツと二人で抜け出して放浪の旅に出るところから物語が始まる。舞台となる国は現代日本がベースだが完全に同じではなく、現在の日本の行き詰まった状況が更に悪化したような近未来日本だ。貧富の差は拡大し、貧者は貧者村に押し込められている。王子テツヒトはこの貧者村でセックス依存症の娘レイコを始めとする風変わりな人々を交流した後、自分の肉体を離脱して自己の前世を知る旅に出発するところで第一部は終了する。
第二部でテツヒトは紀元前3世紀から江戸時代に亘る4回にも及ぶ自分の前世を追体験することになる。各々の世界に生きる前世のテツヒトのエピソードはどれも面白い。前世のテツヒトのキャラや地位は全く異なるが、共通点はは各々の世界で大きな未練を残しており、それが次の生まれ変わりにつながっていることだ。
輪廻転生という概念には不思議な魅力がある。何らかの未練を残して死んだ人は皆「シジマの森」に戻り時を経た後に再び生まれ変わることが出来るのだろうか。 そうなると、完全に満足してこの世を去ることができる人はさほどいるとも思えないので、殆どの人は転生することになるのだが。本書は軽いタッチで描かれているので気軽に面白く読めてしまうのだが、実は結構シリアスな話なのかもしれない。