後藤新平に関する本はいろいろあるが、一冊選べと言われたら、私は本書を推薦する。それは、本書が、後藤新平という人の業績と魅力の中核、「無私の精神」とでもいうものを中心にすえてこの人物を捉えているからである。本書から引用してみよう。
「朝敵」と蔑まれたところから成り上がる後藤新平の人生が華麗な輝きを放つのは、人間の群れが生き続けるために必要な「公共(パブリック、コモン)」に「経綸(国家の統治策)」という発光体を持っていたからだ。それは、権力者が民衆に忠誠を強いる滅私奉公の公ではなく、為政者自身が「私」を捨て、大衆とともに生きようとする思考の基盤であった。その志向性が、新平を、帝国主義列強がひしめく大海原に船出した近代国家日本の針路を測る「羅針盤」に押し上げたのである。
後藤新平をこれほど短い言葉で端的に描いている文はない。
なお、晩年、後藤は、ボーイスカウトの少年たちに「自治三訣」を説いていた。
人のお世話にならぬよう、
人のお世話をするよう、
そして酬いをもとめぬよう。
本書を多くの人、とりわけ政治家や行政に携わる方々に読んで欲しいと思う。