文庫本解説に、本作品がファンタジーノベル賞をとった際の選考委員・高橋源一郎氏の選評が引用されていますが、全くその通りだと思います。
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『後宮小説』にあって他の作品にないもの、それは淡い哀しみを帯びた「軽さ」である。
この小説の「軽さ」は軽薄短小の「軽さ」ではなく、重力から逃れてあることの「軽さ」だ。
『後宮小説』の世界では、登場人物、そこで起こる重要なあるいはどうでもいいような事件の数々も、それらを包み込んで流れる歴史も、そしてそのすべてを語る作者の声も、その一切が重力のくびきを逃れて浮遊している。この「軽さ」は内閉的な夢を語ることによってではなく、ついに重力から逃れることのできない我々というやっかいな存在の運命を直視することによってしか得られることのできない宝庫なのだ。われわれはこの稀な宝物のことを「ファンタジー」と呼んできたのだ。
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方々で「面白すぎ!」という噂を聞いましたが、実際読んでみると想像を遥かに超えて楽しむことができました。もちろん先を読ませる力=中毒性も高いのですが、なにより読後の爽快さと余韻の深さという普通どちらかといえば相反する二つの感覚を心地よく同時に喚起させてくれます。
「人と人との葛藤」だけではなく「人と歴史または運命との葛藤」にまで目が届いて初めて生まれてくる本当のユーモアがこの風通しの良い傑作を作り上げたのだと思います。そしてこのスタイルは『陋巷に在り』という大作に受け継がれていきます。