人間は獲得と喪失を繰り返して生きてゆくのだ、と考えさせられる物語。
正確には経験と忘却、と言った方が正確かもしれません。
厳しい冬が訪れる島で生きてゆく家族と、動物たち。突然訪れる死。人間が生きてゆくことはこういうことなのだ、と胸に染みわたってゆきます。
そこで育った子供たちが島を出て、現代的な生活の中でふと思い出す甘やかな痛みをともなった記憶。
大人になってしまった今ではいつのことだったか、曖昧になりつつもより鮮明になってゆく感情。そして絆。
愛情は降り積もる雪のように深く柔らかく、悲しみは海からの冷たい風のよう。
主人公が淡々と思い出す半生は私たち読者にも共感できるところがあるでしょう。
そして著者であるマクラウド自身がカナダ東に位置するケープ・ブレトンで育っているので、描かれる人々の生活は潮や鉄、針葉樹の香りが漂ってくるかのように写実的です。彼のスコットランド・ハイランダー(スコット・ランド高地人)における深い造詣も目を見張るものがあります。失われつつある血と生活。ポール・ギャリコの「スノー・グース」がお好きな方は気に入るかもしれません。