昭和33年(1958)作品、この年の松竹映画85本中で興行収入第1位の大ヒット作、
小津初の天然色(カラー)映画であり、不要な色を排除したとはいいながらも実にカラー映画らしい、ただし次作以降を見た上で見返せばやはり初めてらしい試行錯誤は感じられる、
松竹映画にわざわざ大映の看板女優であった山本富士子を起用したのも最もカラー映画ばえする女優としてのものであったとおもわれる、山本富士子主演の他の作品と比べれば一目瞭然であるが、小津は美人女優ををけっして浮世はなれした美人としては撮影しない、近寄りがたい美しさばかりが強調されがちな山本にすれば本作の愛らしさは逆にかけがえの無い作品でもあろう、
小津作品ではそれぞれの登場人物はみな控えめに全てが風景画の一部であるかのごとく収まる位置に静かに収まっているのが通常であるが、本作は例外的に何人かの登場人物は強い自己主張を繰り返す、頑固親爺で本来のキャラクターそのままに怒鳴り出す佐分利信、喧しく図々しい浪速千栄子、おきゃんな愛らしさを振りまく山本富士子など小津のフィルモグラフィの中ではかなり特異なキャラクターである、評者はそれらも初の天然色映画だったからこそのものと考える、
本作の冒頭シーンは結婚披露宴である、同じ時期に黒澤明も「悪い奴ほど、」を披露宴シーンで始めている、物語の性質が違うとはいえ同じ儀式を描きながら黒澤作品がくどいほど説明セリフが多いことを多くが気付くべきと思う、
本作で珍しく笠が詩吟を披露する、このシーンこそ小津が最も声高に戦中従軍世代への鎮魂と追悼を表現したのではないかと考えるのだがまだうまく説明できない、