正直なところ、主人公(鳴沢文彦)の人物造型が荒く(ちなみに、捜査官の城田理会警視も存在としては薄っぺら)、その性格破綻振りそして暴走振りには附いていけなかったというのが率直な感想なのですが、やや強引とはいえプロットの妙と作者の筆力で、徹夜で一気に読まされました。後から考えれば、全ての手掛り(例えば、『リセット・プレイ』なる詩の存在や性同一性障害への言及など)はきちんと開示されていましたが、最後まで結末が読めず、その分ラストでは頭を殴られたかのような衝撃を受けました。(それにしても、奏絵の住所が同窓会名簿から消えたことで何故鳴沢が「裏切られたという激しい被害妄想にまみれてしま」(188頁)ったのか、その動機はいまだに評者の理解の範疇を越えています。)
最後の疑問:「ガムテープでぐるぐる巻きにされたDVD四本」(120頁)と「エアコンのリモコン」(同)とは何の記号(隠喩)なのか?そもそも鳴沢の実家は日本の何処に位置しているのか?(事件の舞台はどこの町か?)
本年度の各種ミステリー・ランキングでも上位に入っている訳ではないようですが、読み始めたら止められない一作であることは間違いないように思います。