母親同士が双子の姉妹である、いとこ同士の由美子と昇一。
昇一は母親の遺言に従い、由美子のもとを訪ねたのをキッカケに、由美子は昔、遭遇した事件の影響で見失ってしまった自分を取り戻すべく、ゆかりの場所を訪ね、関係者に会いに行きます。
由美子の、曖昧な自分の記憶と戦いながらも、どこか淡々としているように感じさせる様子は、自分が受けた傷の大きさに、自分自身が気づいていない(正確には「忘れてしまっている」)ということなのでしょうか。
そんな由美子にただひたすら優しく寄り添う昇一。
そんな昇一に由美子は、時々毒づきながらも、心安らぐものを感じている。
このお話を読むときは、ストーリー展開を先読みせず、まずは目の前で繰り広げられる光景に自分の心を添わせるようにして読んでみることをお薦めします。
由美子と昇一の会話が中心となり物語は進んでいきますが、苦しみつつも由美子が昇一と過ごした数日間の中で、何気ない日常に包まれるような幸せを見出していくその様子を、まるで由美子になったつもりで読んでいかれることをお薦めします。
そうすると、ラスト、結末がわかったときの胸の締め付けられ度が格段に違ってくるのです。
このようなラストは正直な話、今まで読んだ他の本の中でも似たようなものを見たことはあります。
しかし、「人の心の揺らぎを単に言葉としてでなく、言葉によって「空気」を生み出し読み手に伝える力がある」よしもとさんの小説でこのラストが登場すると、その衝撃が他の小説以上に立体的に読み手の心に届いてくるのです。