片岡義男の本を読むと、なぜか今回のオリンピックで浅田真央がキムヨナに負けた試合を思い出す。音楽に対する”愛”の差が勝敗の決め手になった。特にショートプログラムの場合で、フリーはその余韻から来ている。片岡義男の音楽評論、特にスプリングスティーンやプレスリーについての文章を読むと、この人がいかに彼らの音楽を愛していたかがわかる。日本語の文章が抜群にうまいのは、日本語を書いていても英語のような感じに読めるという世界でもまれな片岡義男の能力から来ている。もうこうなると作家としての超能力に属する。まるで日本語の魔術師である。その理由は母が日本人で、父がアメリカ人であることだけから来ているわけではない。音楽評論家としての彼の活動を見てもわかるが、英語という表音文字による音の文化と、音楽への愛情から彼の日本語の文章能力は発しているのだ。でも浅田真央は本当に仮面舞踏会の音楽を愛しているのだろうか。仮面の意味なんてあの若さで理解できるのか。キムヨナは自分なりにボンドガールを理解していた。あの自信たっぷりの表情を見ればわかる。誰がなんと言おうと自分はボンドガールをこう理解しているという自信である。観客はこのキムヨナのボンドガールに深い感動を覚えるのだ。ところで、仮面についての理解を深めようと思ったら、17世紀のオランダの画家・フェルメールについて書いた「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著という本を読むことをお薦めする。フェルメールの「紳士とワインを飲む女」の絵の中で、顔を飲み込むほど大きいグラスで一気にワインを飲む女。あのグラスは仮面の代用ではという説が、この本では書かれている。ちょっと難しいかもしれないが、オリンピックに勝ちたいと思ったらこの本を読んではいかが?