1887年スイス生まれの詩人、片腕の世界放浪者、ブレーズ・サンドラール。自分自身の筆名の中に「灰」(サンドル)をたくみに折り込んだ彼は、まさに世界の影を見つめる、鋭敏な眼の持ち主でした。同世代の誰よりも早くアフリカ口承文芸の価値を見抜き、ブラック・アフリカの想像力に大きな尊敬を抱いていた彼が、こどもたちのために(たぶん、何よりも離れて暮らしていた彼の3人の子供たちのために)書いたお話がこれ。アメリカの代表的絵本作家マーシャ・ブラウンが、みごとな絵を添えています。すべての存在の影である、この影ぼっこの冒険を見てください。「目には影がない。 月の子どもにも 太陽の子どもにも、影はない。 土にも、水にも、空気にも、火にも、 どれにもみんな影はない。 影ぼっこにも影はない。」この書き出しで、いきなりくらっときます。すばらしい深みのある童話。おりしも2007年秋、東京でもサンドラールの生誕120周年を祝って、イベントが企画されているようです。この真に偉大な作家の再評価の機縁になることを願ってやみません。