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影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)
 
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影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫) [文庫]

ロイス・マクマスター ビジョルド , Lois McMaster Bujold , 鍛治 靖子
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 1,008 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

不自由な暮らしから逃れるための、気まぐれな巡礼行のはずだった。しかし、次第に異様な出来事が一行を襲うようになる。イスタは眠れる男の夢に悩まされ、供のひとりは魔に憑かれる。さらに、隣国の軍に襲われたイスタらは、危ういところをひとりの騎士に助けられた。ふたたび神の訪いを受け、第二の視覚を得たイスタが、騎士の城で見たものは?傑作異世界ファンタジー第二弾。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

鍛治 靖子
東京女子大学文理学部心理学科卒、翻訳家。梶元靖子名義もあり(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 361ページ
  • 出版社: 東京創元社 (2008/01)
  • ISBN-10: 4488587054
  • ISBN-13: 978-4488587055
  • 発売日: 2008/01
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
物語の展開について、ここには何も書くつもりはありません。
この種の物語は、その展開の面白さこそ命なのですから、
興味を持った人は、無垢の状態で読んでいただければいい。
そして読み進むうちに、僕と同じように夢中になって、
神々と人間の関係を考えながら、作品世界を味わって欲しい。
この作品には、それだけの魅力があることだけを伝えましょう。
この730ページが、シリーズ一齣に過ぎないことに驚きます。

さて、それでも一つだけ、書き添えたいことがあります。
この物語全体、おそらく作者自身が伝いたいことの本質が、
様々に登場してきますが、中でも魂を救われたヒクサルに対し、
イスタが、神からの伝言のように伝える言葉が魅力的です。
「神々が真に望まれるのは疵のない魂ではなく、偉大な魂なのよ。
 花が大地に育つように、偉大さも真の闇において育まれるのでは
 ないかしら。あなたはここにいる誰よりも神の手に近いわ」

ただ清浄を良しとするのではなく、あらゆる罪を背負ったままで、
ヒクサルはイスタの最も身近に使える者の一人に任命されます。
これは、シリーズ次作品への伏線にもなるはずですが、
同時にまたこの五神教シリーズが、単なるファンタジーではなく、
現代の宗教哲学書であるかもしれないと、思わずにはいられません。
過去50年間の世界が、科学を先取りしたSFに導かれたとしたら、
今後は霊魂の世界を描いたファンタジーが、導くのかもしれませんよ!
このレビューは参考になりましたか?
By hogepy
形式:文庫|Amazonが確認した購入
息抜きのための気楽な旅に出たつもりが、敵国の軍事作戦に巻き込まれ、そこから辛くも救い出されたと思ったら、またもや五神が絡んだトラブルに巻き込まれる事になってしまいました。
軍事作戦と五神が絡んだトラブルには関係がなさそうに見えましたが、実は直接的な因縁があったのです。

前作「チャリオンの影」では、昔に行われた奇跡(呪い)の儀式が予期せぬ結果を残して、この世に災厄(呪い)として残ってしまったことが発端になっていました。
今作は、前作にも少し登場した、中年皇族女性のイスタが主人公です。
イスタの娘イセーレは、前作で国主になっていますから、イスタは国太后になります。

前作では、「気がふれた中年女性」のように描かれていたイスタですから、とても主人公に向いているとは思えません。
予想外の起用のように感じられるかもしれませんが、それこそがこの作品の肝なのです。

前作で語られていることですが、イスタはイセーレを身ごもったときに神と会い、聖人になりました。
しかし、そこで与えられたミッションを果たすことができませんでした。
奇跡の失敗は不幸な事件を引き起こします。
若かったイスタは事態を理解することも収集することもできず、周りにも理解できる人間がいなかったため、事実は誰にも語られることがないまま封印されました。
その結果、周りからは「抱えきれない不幸のために気がふれてしまった女性」と見なされ、呪いの影響もあって不幸のどん底にありました。
神から果たしようもない過重なミッションを与えられ、そのせいで人生の半分を不幸に塗りつぶされてしまっていたわけです。
前作ではカザリルの活躍で呪いは取り除かれましたが、それまでに受けた不幸の数々は清算されたわけではありません。
(これをなんとかしよう、ということでこの作品が作られたのだと思います)

イスタは「気のふれた人物」と見なされているので、保護監察の下での生活を余儀なくされています。
今作でイスタは国太后になっているわけですが、これは状況をむしろ悪化させました。
それはそうです。
頭のおかしな国太后が権力を使って好き勝手したら周りは大迷惑ですし、万一事故に巻き込まれたら、保護責任者が処罰されます。
ですから、ますますがんじがらめの保護監察下に置かれているわけです。

そこでイスタは一計を案じ、「巡礼の旅」と称した息抜きの旅行に出かけることに成功します。
そしてその旅の途中で「魔」が絡んだ陰謀に巻き込まれていき、その解決のために冒険をすることになるというのが、「影の棲む城」のストーリーです。

前作「チャリオンの影」では、「魔法」が出てきませんでした。
しかし今作では、「魔法」が重要な要素になっています。
簡単に言えば悪い魔法使いが出て来て、それをやっつけてハッピーエンドという形です。
とは言え、ビジョルドさんの作品ですから、そんな単純な話にはなりません。

イスタからすると、前回、神から過重な使命を与えられたことが不幸の始まりでした。
だからイスタは神にたいして信仰心など持っていません。
被害者なわけですからむしろ憎んですらいます。
神々の思惑通りに動くなど、まっぴらごめんなわけで、好き勝手に行動をします。
それがストーリー展開を面白くしているのです。

前作では、神々はほとんど姿を現しませんでした。
ところが今作では、何度も擬人化した姿をイスタの前に見せます。
前作のカザリルに対しては直接姿を見せなかったのに、イスタの前には度々姿を現し、言葉を交わすのです。
つまり神々にとってイスタは、それだけ特別な存在ということなのです。

イスタは苦労の末にミッションを完遂し、過去の不幸な事件は清算されます。
「影の棲む城」は、「チャリオンの影」の後にどうしても語られなければいけない話だったのです。
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3 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 日出
形式:文庫
影の棲む城下巻
上巻で多くの人名(40名以上)が掲出されていたが、下巻で新しく掲出された人名は4名だった。本書下巻の表紙の絵の男性は誰だろう?アリ−ズか、グーラ兄弟のフェルダかフォイだろうか。31頁「騎馬のふたり連れが全速でこちら(ポリフォルス城)にむかっている。〜。〜カボン学師のはずむ巨体の下で懸命に足を進める馬の努力がはっきりわかった。」 32頁「もうひとりの騎手−そう、あれはたしかにフォイ・ディ・グーラだ−〜。」 これに続けてジョコナの部隊が刻々と迫っている。 33頁「アリーズが剣を高く掲げ鋭くふりおろすのを合図に、〜(ジョコナの部隊に)猛然と突進した。」 34「『アリーズさまがやられた!』」 だがアリーズはなんともない。そのかわり不思議にも、36頁「イルヴィンの肩を抑える彼の両手はべったりと血に濡れ〜」 ている。 55頁「『〜かつて公女だったウメルエは、魔に憑かれた魔女としてここ(ポリフォルス城)にやってきたのよ。〜』」 56頁「『〜ウメルエとアリーズが生命を落としました』〜。〜。『〜(魔に憑かれた)郡妃(カティラーラ)はすぐさま魔を支配して(夫の)アリーズの魂を無理やり肉体にもどし、(義)弟イルヴィンの力を奪って(アリーズの)死体をこれまで変わらず働くようにはからいました。〜』」 57頁「『〜。今朝の(カボンとフォイを救うべく)戦いでアリーズさまがジョコナ兵の槍に刺されたときも、その傷はイルヴィンさまのお身体にあらわれました。〜』〜。『〜イルヴィンは、〜生命を魔術によってひきだされ、ゆっくり死にむかいつつあるわ。〜』」
88頁「イスタとアリーズは、昼間の熱の冷めきっていない石のベンチの両端に腰をおろした。」 93頁「『〜(イスタの夫アイアスの父である)フォンサ国王が、〜、死の魔術をおこなって敵を殺し、その代償としてみずからの生命をさしだした〜』〜。『〜、その儀式によりある力がこぼれ、フォンサ国王の子孫と彼らの行為すべてをひそかに害する呪詛となりました。〜』」 94頁「『〜、おふたり(アイアスとルテス卿)はずっと以前から愛人(男色)関係にありました。〜』」 97頁「『〜夏の母神おんみずからが、夢ではなく、目覚めているわたし(イスタ)、の前に顕現なさいました。〜。母神は、傾きかけたチャリオン王家のために、三度生命を投げだす者が呪詛を破り、〜祓うだろうとお告げになりました。〜。〜わたし(イスタ)は、〜その矛盾に満ちた言葉を実現するよう命じられたのだと解釈しました』〜。『〜(アイアスとルテス卿との)三人で相談しました。〜。わたしたちはアルヴォル(・ディ・ルテス)卿の服を脱がせ縛り、逆さに吊るして桶につけました。〜』〜。『〜卿をひきあげ〜水をはかせ、〜、卿が息を吹き返してむせました。〜。二度目にひきあげたとき、卿は完全に息絶え、〜甦らせることはできませんでした。〜』」 100頁「『これが、わたし(イスタ)があなた(アリーズ)のお父上(ルテス卿)を殺した顛末です。〜』」
104頁「郡妃(カティラーラ)は町の守備隊の厩舎から荷馬車と馬をもちだしていました。〜。〜カティラーラが(アリーズとイルヴィンの)二人を運びだした〜。アリーズを連れ、彼(アリーズ)を維持しておくためにイルヴィンをさらった〜。」 105頁「『郡妃(カティラーラ)は郡候(夫のアリーズ)を生き返らせたいと、少なくとも、あの奇妙な半死状態をいつまでも維持しておきたいと〜』」 イスタは城を出たカティラーラを追う。115頁「(カティラーラの)馬車がゆったり停止した。〜。馬車の中には〜、いまにも消えそうな人影が(アリーズとイルヴィンの)ふたつ、ならんで横たわっていた。」 118頁「イスタは〜じっと観察した。<できるだろうか>〜<そう、とにかくやってみよう>〜。〜、カティラーラは気を失った。」 121頁「イルヴィンは〜ぐったりとよりかかっているカティ(ラーラ)を見おろしてたずねた。『どうしたんだ。大丈夫なのか』イスタは〜答えた。『〜わたしは彼女(カティラーラ)に、その−しばらくのあいだあなた(イルヴィン)と役目を交替するよう〜したのよ』〜。カティラーラの肩にゆっくりと赤いしみがひろがりはじめる〜。」 122頁「『馬車のむきを変えろ。ポリフォルス(城)にもどる』」
133頁「〜前方で、〜大規模の騎馬隊が、いままさに街道にのりいれようとしていた。〜ジョコナの白いペリカンが鮮やかだ。」 137頁「(ジョコナの)敵軍はすぐさま背後で隊列を整え追撃をはじめた。」 138頁「(イスタの)荷馬車は大きく揺らぎ、〜。後輪の車軸が折れる音とともに、荷台のうしろ半分が地面についてひきずられはじめた。」 139頁「荷馬車が〜停止した。〜。『カティラーラを連れていきなさい。このままでは全滅してしまうわ!フォイ、リスといっしょに行くのよ。敵を突破しなさい!』〜。二騎が馬首を返して駆け去った。」 141頁「やがて(イスタの)荷馬車は〜十人以上もの敵「(ジョコナ)にかこまれてしまった。」 142頁「若い士官が興奮してはねる馬を御しながらやってきて、女のかたわらにおりたった。〜<魔術師だ>」とイスタは思った。144頁「<では、これがジョエン太后妃なのか>イスタは衝撃とともに知った<それにソルドソ大公だ>」 146頁「丘の上でふいに大音声が響きわたった。」 147「馬の大群が雪崩のように押し寄せてきた。ジョコナの弓兵がはじきとばされ、踏みつけられる。」 153頁「だが頭上にそびえるポリフォリ城はもう目の前だ。」
164頁「イスタはカティラーラの首の周囲に結び目をつくった。〜。うまくいったようだ。ふいにカティラーラの目がひらき、〜。〜。イスタはたずねた。〜。『街道にたつジョエンを見たわ。腹部の黒い穴から十本もの光の蛇があふれていた。それぞれの蛇の先端に魔術師がいるの?』『そうだ』(カティラーラの)魔がささやいた。『あの女(ジョエン)はそうやってわれわれ(魔術師)を縛り従わせる。〜』『光の一本は(息子である)ソルドソ大公につながっていたわ。〜』」 168頁「魔』(カティラーラ)は〜、話しつづけた。『〜(あるとき)ひどく年老いたひとりの魔術師がいた。〜。年老いた魔術師は正体を見破られ〜火刑に処せられた。〜魔は、〜、死を迎えつつある宿主からとびだした。〜三歳になる将軍の娘、(宿主に)ジョエンを選んだ』」 さて178頁で魔についての説明がある。「人が死を迎えると、魂のために神々への道がひらかれます。そのときに扉をくぐるかどうかどうかは魂自身の選択に委ねられます。その瞬間、扉は双方向にひらかれるのです。つまり魔にとっては、ふたたびとらえられる危険があるわけです。だから魔は、宿主が殺されると逃げ出すのか−」 作者は同じ178頁で『ああ、なんてややこしい』という台詞を登場人物に言わせているのだけれど、この「魔」の設定自体がややこしい。きっと作者は頭の良い人なのだろうが、このような一回読んだだけでは理解できない箇所がところどころでてくる。
175頁「『アリーズ、外はどうなっているんだ』イルヴィンがたずねた。〜。『斥候の見積もりによると、ジョコナ兵はおよそ千五百。〜。ポリフォルス(城への)包囲網はほぼ完成しているようだ〜。』」 179頁「『アリーズさま!城門にジョコナの使者がやってきて、交渉を申しでております』」 183頁「『ジョコナ大公の言葉を伝える。〜、イスタ国太后を即刻ひきわたすべし。守備隊の全士官、全兵士は武器をおろし、城門を出て降伏せよ。さすれば生命までは奪わぬ』」 184頁「『答えはむろん否だ』」 193頁「イルヴィンは〜彼女(イスタ)の手をとった。」 194頁「いつのまにか彼(イルヴィン)の親指が〜イスタの手のひらを揉みほぐしている。〜。イスタは軽率にもたずねてしまった。『何かしら』『あなたと恋に落ちることだよ、愛しいイスタ』〜。『イルヴィン、ふざけないで』〜。彼がせまってくる。イスタは魅せられたまま、身をひこうとしなかった。〜。彼のくちびるは煤と塩辛い汗と、生涯でもっとも長い一日の味がした。」 198頁「『ここからあの(敵のジョコナの)野営地を見て、ジョエンの魔術師が何人いるか、〜』」 199頁「『〜。ぜんぶで十八人ね』」 204頁「『突撃隊を出すのか。魔術師狩りだな』」 207頁「『まさしく、今夜だ。われわれはこれまでどうしようもなく防禦一辺倒においやられてきた〜』」 213頁「〜ジョコナ軍に包囲され、魔術師部隊の攻撃を受けている〜。水はなくなったし、肉には蛆がわいている。中庭の半分は燃え、三分の一の馬は死んだ〜。兵たちは〜病と怪我で死んでいこうとしている。」
イスタはまた意図せず神と交える。219頁「〜回廊へとすべりでて、ひとけのない階段を三段おりたところで、イスタは足をとめて息をのんだ。憂いに満ちた長身の男がふたつ下の段に立っていた。〜。男はその顔も身体も輪郭が定かでない。〜。『〜、われの行くことかなわぬ迷路の中であれを導け』父神が身をのりだし、イスタのひたいに口づけした。〜。『わたしに、御身にかわって霊的指導者になれと仰せられるのですか』〜、『否、わが扉となれ』〜。父神が一歩さがり、階段はふたたび無人となった。」 226頁「『ついさっき、階段で父神にお会いしたのよ。よくお聞きなさい』〜。『父なる神がその宮殿にあなた(アリーズ)をお召しです。』〜。イスタは彼(アリーズ)のひたいにくちびるを押しあてた。〜。〜、彼の両手の甲に口づけ、さらに足もとにひざまずいて両のブーツにもくちびるをあてた。〜。『これでわたしたちは間違いなく祝福された』アリーズが畏敬のこもった声でささやいた。」 228頁「アリーズの静かなひと言で、ささやかな決死隊〜全員が騎乗する。」
237頁「(アリーズの傷を受けて)カティラーラとイルヴィンふたりともの右の太股に、長く黒い傷が口をあけていた。」 アリーズは攻撃を受けながらも奮闘しているようだ。238頁「敵(ジョコナ)どもは〜悲鳴をあげながら逃げだしているようだ。〜野営地を突き進んでいくアリーズの足どりが手にとるようにわかる。」 240頁「アリーズが背中に強烈な一撃を受けたのだろう。イルヴィンが弓なりに反りかえり、〜。カティラーラの白い手首がなかばちぎれ、〜。〜。ためらうような沈黙につづいて、影になった森の中で、五十人ものジョコナ人の咽喉から狂気を帯びた異様な勝利の喚声が発せられた。」 241頁「イスタはささやいた。『さようなら』〜。<これで終わった。父神よ、ご満足いただけましたか>」 243頁「〜夜明けがふたたび地平線のむこうにひっこんでしまったかのように、周囲の世界が暗くなった。〜尋常ならざる(庶子神の)声が、旅人のようにふらりと(イスタの)心にはいりこんできた。〜。巨大な腹を押しつけられて背中が熱くなると同時に、肩に大きな両手がかかり、みだらな仕種で尻に下腹部が押しつけられた。」 244頁「気がつくとイスタは〜、驚いて腕をつかむイルヴィンに支えられていた。」 245頁「『いったい何があったんだ』『何も聞こえなかった?誰もみなかったの?』『ああ、あなた(イスタ)には誰かが見え、聞こえていたようだった』」 246頁「イスタはふり返った。血染めのドレスを大きくふくらませて、カティラーラが立っていた。目をかっと見ひらき、口をあけ、魔の光が身体いっぱいにまでひろがって猛々しく脈打っている。」 247頁「<ああ。いま、どうすればいいのか理解できた>イスタは心の手をのばして、〜カティラーラの魂から魔をつまみあげた。〜、あとからついてきたカティラーラの魂の断片を押しもどし、魔のみその手におさめた。〜。<そうだ>と(庶子神の)声が促した。<それでよい。さあ、つづけよ>〜。イスタは肩をすくめ、魔をぽいと口にいれ、のみこんだ。」 
第二十五章258頁「『国妃さま。お迎えの者らが通用門に到着いたしました』」 259頁「イスタはイルヴィンに導かれて階段を下りていった。」 263頁「〜イルヴィンに手をとられ、暗く狭い塔の下を抜けていった。扉があいて光が射しこむ。〜、城壁の前の深い亀裂に橋としてかけわたされた〜。〜。イスタは、投降する彼女(イスタ)を迎えるために城門の前に整列した(敵の)ジョコナの一団を見わたした。」 264頁「渡し板はすぐさまきしみをあげながら門のむこうにひきあげられ、ばたんと扉が閉まった。〜。<渡り終えたとき、庶子神はいなくなっていた>」 368頁「ソルドソが馬を近づけ、頭のてっぺんから爪先までイスタをながめわたした。〜ソルドソが手を掲げおろしたのをあいずに、一行は凹凸の多い乾いた地面を進みはじめた。〜。この行進を(にデハ?)目撃させるかのように、〜ポリフォルス兵たちの死体がならべられていた。〜。血肉の堆積というべきだろうか。その惨状の背後に槍が突き立てられ、てっぺんで、変わり果てたアリーズの頭部が〜。〜両目はえぐりとられていた。」 272頁「イスタ自身は、どこかに神の息吹が感じとれはしないかと、力の失われた五感をひろげてみた。何もない。ジョエンとソルドソは彼女(イスタ)の敗北の象徴として、〜、アリーズの頭部をその通り道に配置したのだ。」 275頁「ジョエンが立ちあがってイスタを正面から見据え、〜言った。『ようこそ、わがもとへ、イスタ・ディ・チャリオン。わらわはジョコナの母である』〜。イスタの中に神がひろがった。〜魔が邪悪な臍の緒をひきながら、猛然とイスタに向かって飛んでくる。イスタは口をひらき、獰猛な笑みを浮かべてその魔をのみこんだ。」
第二十六章278頁「イスタは精神の手のみ使って、魔とからみあったジョエンの魂を解きほぐした。だがいそいで作業をおこなうそばから、〜、ふたたびひきもどそうとする。魔が悲鳴をあげた。」 279頁「<ならば仕方がない>イスタは巨大な濃紫の魔を口もとに運び、のみこんだ。それは悲鳴とともにひろがりゆがみながら、口に苦痛をもたらし、食道を焼いた。」 281頁「ジョエンが口をひらき、白目を剥いて、くたくたとくずれおちた。」 282頁「またひとつ、さらにもうひとつ。魔が漂ってきては速度を増して彼女(イスタ)を通り抜けていく。」 無我夢中のイスタは、289頁で「『わたしの使命ですけれど、これで終わったのかしら』〜。『わたしはジョエンの命令どおり、ジョコナ兵に殺されたのかしら』」と庶子神に疑問を呈する。ところで、288頁の「『偉大なる魂をもつイルヴィンも同じよ。あれはつまるところ、汝を(イスタ)を欲してわれ(庶子神)に祈っていたのだ』」という庶子神の唐突の台詞は、何を意図しているのだろう。他所でこれに付随するような説明は一切ないのだが。 290頁「『生きている。五柱の神々に賭けて、息を吹く返した!』押しつぶされるような圧迫感は、身体にまわさらたイルヴィンの腕だった。木々の梢と青い空、そしてのぞきこんでくる彼(イルヴィン)の顔が見える。」 293頁「イルヴィンがじっと見おろしている。まるで、口づけによって愛する者を死から蘇らせたものの、〜、身動きできなくなってしまった男のようだ。」 294頁「ふいにイスタは現状を認識した。〜、『脱出しましょう。いますぐに』」 299頁「ジョエンの死によって、自然のものも超自然のものもあわせ、どれほどの抑圧が解放されて混乱となっているのだろう。イスタはふり返らなかった。」 305頁「丘沿いにゆるやかな弧を描いて進むと、野営地が見えてきた。〜。『(カティラーラの父の)オービュ候か』イルヴィンが満足げな声をあげた。〜。騎馬の哨戒部隊が全速で近づいてきたかと思うと、士官が驚愕の声をあげ、大きく手をふった。『(イルヴィン・ディ・)アルバノス郷司ではありませんか!〜、生きておいでだったのですね!』」
第二十七章オービュの野営地で、イスタはリスから、ジョエンは亡くなってジョコナ軍は撤退し、ソルドソとその取り巻きは捕らえられ、ポリフォルス城は無事に確保されたと報告を受ける。
第二十八章は最終章です。アリーズの葬儀が行われ、寡婦となったカティラーラは実家のオービュへ帰る。352頁「イルヴィンが階段をあがってきてイスタの扉をたたいた。」 354頁「〜(イルヴィンの)指が心地よく髪にからむ。口づけは長かった。」 最終の355頁は、「イスタは寝台の上でそっと彼(イルヴィン)をひきよせた。夜は暖かく、シーツも毛布もいらない。〜よく見えるよう、蝋燭は消さずにおいた。」 で終わりました。
さて、再び読め返してみて下巻95頁「『〜お母上がイルヴィンのお父上を床に招きいれたことで、誓いに対して不実であった〜。〜。あなた(アリーズ)のお祖母さまはきっと、高貴の方との婚姻を前にした娘に対して、わたし(イスタ)の母ほど抜け目なくも正直でもなかったのね。それともただご存じなかっただけなのかしら』」は、上巻245頁の「『〜アリーズさまの母上さまは−〜、城代であるアルバノス郷司と思いをかわしあうようになられましたの。〜、イルヴィンさまがお生まれになったのは−つまり、日にちがあわなかった〜。〜』」という不義の示唆と呼応してると分かった。が、後半の意味はとうとう理解できなかった。筆者は利口すぎる。実際このような何かの伏線を示唆するような箇所がほかに数箇所ある。<五神教シリーズ>第二弾の本書ではあるが、第一弾の「チャリオンの影」に伏線があって読んでないと分からないものなのか。「チャリオンの影」にはそれぞれ、イスタの息子テイデスの死について、イスタの娘イセーレの結婚の経緯について、チャリオン家の呪詛を破るカザリルについて、詳しい。が、作者の頭の中の物語の構想からの伏線であって具体的な記述がされないことがある。また創元FTのの番号で「影の棲む城 下」に<ヒ5−5>とあって、「死者の剣 惑わし」に<ヒ5−8>とある。<五神教シリーズ>の第三弾(The Hallowed Hunt)上下巻はまだ翻訳されてないが出版予定で番号が付与されているのか?それから下巻の表紙の絵の男性が誰かよく分からない。誰だろう?齢四十のイスタとつりあうイルヴィンでは、絵が若すぎるし、イルヴィンの二つ年上の兄アリ−ズでもない。グーラ兄弟だろうか?
以上、「影の棲む城」は多くの賞を獲得しており、第一弾の「チャリオンの影」と比較すると、”神が触れる”情景の描写も多く読者にカタルシスを喚起させます。ただヒューゴー賞、ネビュラ賞の受賞にも関わらず、SFではありませんでした。たぶんにファンタジーですが、「神・魂・魔」の語彙から宗教的で霊的なかつ血の香りがしました。作者と訳者はともに女性です。だからでしょうが、血は残虐性ではない、あえて喩えれば「生理」の血のような、そんな読後感でした。
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