この本を「所詮ファンタジー」と侮ってはいけない。
全世代必読の1冊だと思う。
描かれているのは魔法使いが普通に居る「ファンタジー」な世界だが、人間の内面性を非常に深く描き込んでいる作品で、大人が読んでも十分楽しめる、かなり手ごたえのある内容になっている。
「ゲド戦記ー影との戦い」は、主人公ゲドの幼年期から青年期までを描いた話であるが、
彼は類まれな魔法使いの資質と思春期特有の(!?)過ぎた虚栄心から、大いなる災いである「影」を招いてしまう。
正体の知れない「影」と戦い、敗れ、逃げ、恐れ、大いに迷い苦しむのだが、そうした紆余曲折を経るうちに次第に「影」と「自分」について、この関係の本質が「何」なのかを深く考えるようになる。
平たく言えば己の葛藤、様々な人間関係などを通じて、自身も成長するといった内容だが、読まれた方は誰しもゲドの心情、行動に共感を持つと思う。
地位、名誉、金、何でもいいが、ある種の「力」を手にした時、高慢になりがちなのは、主人公ゲドに限ったことではないと思う。
力ある、と思うからこそ陥りがちな驕慢、妬み、自尊、または虚飾に踊らされる自分、そういった日常をご体験の方も多いのではないだろうか。
そして苦い失敗。
心のバランスとは難しい。この本を読む度に、主人公ゲドと共に自身も深く内省する部分がある。
中学の時に初めて読んで以降、私も何度と無く読み返した。
今の自分を振り返ってみても、この本の影響は大きかったと思う。
大人になってからも楽しめるが、大人になる前の「中高生」には特に、是非、一度目を通しておいて欲しいと思う1冊だ。