タイトルナンバーはオールタイムベスト級の傑作。南極探検隊と恐るべき擬態能力の異星人との息詰まる戦いをスリルとサスペンスたっぷりに描く。一体誰が既に乗っ取られているのだろうか?異様な緊張感が徐々に高まってゆき,隊員全員がそろってのテストの場面でピークを迎える。ジョン・カーペンター監督の作品にうなった人なら,この素晴らしい原作に,なるほどとうなずくに相違ない。
「ごきげん目盛り」は,暑くなるとキレるアンドロイドとその持ち主の男との逃避行を,ドライでややキワモノ的なベスター節でぐいぐいとばす作品。「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」と「唾の樹」は,ともにラヴクラフト風の異生物の脅威をかっちりと書き込んでいる。もっとも「・・地下墓地」は大真面目に,「唾の樹」はパロディじみた洒落っ気を感じさせるのがおもしろい。後者は,名高いネヴュラ賞受賞作なので,要チェックでしょう。
「探検隊帰る」は,繰り返し帰還する火星探検隊とそれを抹殺する人々の耐え難い無力感を描く。温かく歓迎されることを疑わない探検隊の信じがたい現実と絶望をディック一流に強烈に料理したものが味わえる。
クーンツの「悪夢団」は,抑え目のスプラッター。酷薄なエスパーに率いられた凶悪犯罪者集団の蛮行がエスカレーションする中で主人公の最も恐れることをタイトにまとめた好短編。
さらに,ライバー,ナイト,ヴァンス,ゼラズニイ等々御大揃い踏み状態のボリュームあふれるアンソロジーだ。