有名な新撰組に比べて 彰義隊を知る人は少ない。土方や沖田のようなスターがいないことに加えて 上野の戦争はわずかに一日で終わってしまった。そんな短い間のことをドラマチックに書くことは難しく 彰義隊について書かれた小説やドラマもあまりない。私はひょっこり子母澤寛の小説を読んだことから(彼の祖父が彰義隊士)彰義隊に興味を持って関連本を読み始めた。この本は地域雑誌として有名な「谷根千」の編集者森まゆみが多くの資料にあたり、地元の上野を歩き、「谷根千」の取材の際に土地の古老から聞いたことをまとめて彰義隊の全貌を描いた労作である。大身の旗本から下働きまで 彰義隊に参加した人たちのことが語られ、さらに輪王寺宮のことも詳しく書かれて 今までの疑問がいくつか解けた。上野の戦争の後、すぐに見物に出かけ、宮様の住まいから什器を持ち出したり、見物客めあてにおにぎりを売るものがいたり、と町民たちは逞しい。江戸の人々は彰義隊贔屓と言われたが上野の近くの人たちにとっては労働に借り出されたり家が焼かれたりとけっこう迷惑でもあった。こういう庶民、敗れた後の彰義隊士とその家族、弱者の視点から森さんはこの時代を描く。