今作の大筋や、メイン人物の感想はすでに素晴らしいレビューがたくさんあるので省きます。
個人的には、今回初登場の子蘭のキャラクターに胸を打たれました。
「彩雲国」の1作目は、きれいにまとまった大団円の物語でした。
しかし、その筋書きは仕組まれたものであった…、というのが2作目以降の展開。
良い意味での前作の否定、どんでん返しにいつでもハッとし、ワクワクさせられてきました。目に見える現実の裏の華麗なる策略、さらなる陰謀、そのせめぎ合い…。
初登場の子蘭ですが、この意味で「彩雲国」の凝縮と言えそうです。
登場シーンと、次に姿を見せた時のギャップ、さらにそこに秘められていた自らの思惑と心情、そしてさらにその裏に隠れていた想い。
まさに「彩雲国」!という感じで、驚き、納得し、感動しました。
隠れていた想いを暴いた言葉は「それが君の精一杯の誠意だから」。
弱くても揺らいでも、時に卑怯でも、彩雲国の人々はそれぞれに精一杯誠実です。その筆頭が秀麗で、だからこそ読者は前のめりに応援したくなるんだと思います。
そして、子蘭を語る旺季の言葉の軽さも、やっぱり「彩雲国」らしさです。
蝗害のさなか、救援を向かえた紅州の人々の軽さのように、どんな事態でも深刻に陥らない。
真剣に立ち向かっても、決して深刻ぶって重々しくならない軽さに救われます。
このシリーズは、もうずっと1作で独立した小説というより、シリーズ中の1本という描き方でした。
『紫闇〜上』も、最終巻の1作前としての評価で、5にしました。
結末を前に抱える想いは複雑ですが、読まずにとっておく事はできそうもありません。