橋本さんの作品世界は優しい。ときに繊細といってもいいくらい。
その作品世界の空気が好きで新刊が出れば読む。
私の資質と相容れない作品もあるにはあるのだけれど……。
『彩乃ちゃんのお告げ』は橋本紡らしい作品だと感じた。
小学五年生にして教祖さまの彩乃ちゃんと関わった三人の物語。
何も劇的なことは起こらない。彩乃ちゃんについても、さほど細かくは語られない。
不思議な力もおどろおどろしいものではなく、さりげなく物語のポイントになるくらいの
さらりとした描きかただ。
ひと夏の間、ごく短期間順に関わっていく三人は年齢も性別も違う人たち。
それぞれに心に屈託や悩みを抱えている。それぞれの人が
日常のちいさな出来事を通して彼女の内面に惹かれるようになる。
なにも魔法のようなことは起こらない。けれど、彩乃ちゃんのちいさなアドバイスに
背中をおされることになる。大きく踏み出す一歩ではないけれど、
迷いや不安の渦中からほんの少し行く道が見える。
彩乃ちゃんを通して自分の内面を見つめ直していくようすは、少し苦く、
そしてほほえましい。大人も子どもも、自分と向きあう姿は同じだ。
三話ともそれぞれの味わいがあるのだが、私は第二話の「石階段」がいちばん好き。
じりじりと夏の熱に灼かれながら、ひとりで苦悶し、必死で自分の道を探す辻村君の
青春が眩しかった。