近代の世界史を勉強すれば、張学良が蒋介石を監禁した西安事件は国共合作の経緯となったクーデターとして広く知られています。
もちろん、関東軍のために爆殺された張作霖の息子であるということも知られていますが、1990年のNHKの取材当時、台湾で張学良が存命であったことに驚きました。
NHK取材班は、歴史的証言を引き出すベく、当時90歳近い張学良に3日間のインタビューを試み、その証言に加え、当時の歴史事象と写真で知られざる中国近代史のブラックボックスに光を与えた好著だと思います。
本書は廃刊になり、なかなか入手しづらいようですが、たまたま古書店で見つけ購入し、あっという間に通読しました。その関わってきた歴史の重みが凄まじく、発言ひとつで、近代史の常識が変わるような存在です。それゆえ、彼の語りは、知的好奇心をくすぐり、NHK取材班も果敢に歴史の闇の部分に光を当てようと努力しているのが分かります。
奉天軍閥の張学良はアヘン中毒者として理解していましたが、それを克服すべく渡欧したのも今回初めて知りました。また蒋介石を監禁したことにより、軍法会議にかけられ、戦後も含めてずっと幽閉生活を送ってきたという人生もまた凄まじいものです。数奇な運命をたどり、歴史の大河の中で翻弄された張学良を知ることで、当時の日中関係の問題も浮かび上がってきます。
本書の259ページにも記されていますが、放送後の反響は非常に大きく、番組に対する意見や問い合わせの電話が1週間以上鳴り続けたことで、この証言の重みが理解できることでしょう。
2001年、張学良は100歳という寿命を全うしました。歴史の闇の部分は墓場へ持っていかれたのでしょう。