独特な語り口で知られる著者だが、この自己決定権という問題にかんしては、徹底してラディカルな立場に立って議論を進めている。つまり、自己決定を妨げているのは社会の圧力であり、パターナリズムであり、弱者の自己決定権は最大限守られなくてはならない、とする立場である。このような立場の論者も必要だろう。たしかに、著者が専門とするALS(筋萎縮性側索硬化症)はあのホーキング博士が罹患した疾患であり、長年のレスピレーター装着を必要とするが、日本においてはその装着率は30%と低率であり、それはこの30年くらい変化していないのだ。それは、「人工呼吸器を付けて生きてゆく」という選択が事実上閉ざされているという状況に置かれている患者が多いことを意味し、またこのような患者はTLS(閉じ込め症候群)といって眼球運動以外で自己の意志を伝える手段を奪われるために、「生きていてもしょうがない」と周りも思うし、患者もそう思い込まされているということも意味している。しかし、その現状への憤りからか、著者は医療従事者に対しては強い不信感を持っているように感じられる。これは本来弱者側にとっても望ましくないことであると思われる。
特殊な文体のために読み難く感じられるかもしれないが、それでも著者の立場が徹底している分、強い説得力を持つように感じられるのも事実だ。このような問題に関心のある向きにはお勧めできる。