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8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ラヴクラフトを同時代に読んでいたら…,
By かま猫 (長野県佐久市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 弧の増殖 夜刀浦鬼譚 (単行本)
クトゥルー神話の諸設定、特にラヴクラフトの『闇に囁くもの』の諸設定を元にした、現代的な恐怖譚。『闇に囁くもの』は、大好きなラヴクラフト作品の中でもとりわけ「宇宙的」で、私の特別なお気に入りの一つだ。これはそれを元にした物語だからたまらない。あちこちで密やかに張られた原作品へのリンクが、いちいち楽しいし、それにすぐに気がつける自分が、ちょっとばかり誇らしくもある。序盤に出てくる「暗号」も、登場人物たちより一足早く解けて、とてもいい気分だった…もっともこれもまた、初めからファンに先読みされるのを前提として用意された、楽しむための「仕掛け」で、作者の掌の上で転がされていることには変わりないわけだがw。『闇に〜』で効果的に使われているのが、手紙や蓄音機などの通信や最新メディア機器、そして新聞記事に載る都市伝説的なエピソードだ。この物語ではそれを踏まえて、ケータイやパソコン、サーバー施設、あるいは都市伝説の携帯サイトなどがふんだんに使われ、重要な役割を果たす。そしてそうした巧妙な現代への「翻案」が、この作品の恐怖を身近な「今ここにある恐怖」に変貌させ、より鮮烈で迫真的なものにしている。そしてその鮮烈さと迫真力は、別にクトゥルーファンでなくても十分に堪能…というより戦慄…できることだろう。 あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、ここでは仄めかす程度にしか書けないが、他にも「ケーブル」や「雑音」も恐かったし、他のクトゥルー作品の呪文やフレーズとの「暗合」にもゾクゾクさせられる。そしてそれらが独特の「異化された表記」で登場してくるところがまたたまらなく恐い。 とにかくその恐怖の「現代性」と「鮮やかさ」が印象に残る。ラブクラフトを同時代に読んだ人は、きっとこんなふうに恐かったんだろうと思わせる、そんな一冊だった。
10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
英語圏でも知られている著者のクトゥルー神話,
By ZEPHYROS (蒲田) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 弧の増殖 夜刀浦鬼譚 (単行本)
奇譚ではなく鬼譚。最初の方の段階でクトゥルー神話を知っている人には、何が起きているかおぼろげながら見当がつく様になっている辺りは心憎い構成。都市伝説を効果的に利用している辺りは、超自然に関して常に流行を意識して取り込んでいたラヴクラフトのやり方にも似ている。 英訳もされた「クン・ヤンの女王」で言及されている著者の創造したヨス=トラゴンの名がここでも登場し、しかもユゴスで崇拝され夜刀浦の神でもあるらしい。更にヨス=トラゴンに仕える存在らしい電磁波生命体のイルエヰックの名前も登場。しかし只でさえ発音し辛い名前が余計に発音しにくい名前に・・・父が若い頃、一度だけ聞いた事があるそうだが、”ヰ”の音なんて発音出来る人、滅多に居ないだろう。 「恐怖まだ終わらず」のラストも美事。 それにしてもヒロインがおそらく「深き者」の血を引いているのだろうが、結局、彼女が変貌するまでは描かれなかった。それとも続編か夜刀浦を舞台にした別作品で、描かれるのだろうか。
8 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
期待して購入してはみたけれど…,
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レビュー対象商品: 弧の増殖 夜刀浦鬼譚 (単行本)
朝松先生の新刊で、且つクトゥルー物とのことで、早速購入。一気に読んでみたが、残念ながら何というか「短編か中編でも良かったような感じ」という印象を持った。 本作ではスピード感を殺さない為なのか、朝松先生の持ち味であるウンチクはほぼ無し。(アレが好きなのに><) また、作品の舞台である夜刀浦市の伝承や、古くからある士族の役割、物語の背景に当たる部分はほとんど無い。 15年前に陰惨な事件が起こり⇒それはメインとなる事件の準備である事が明かされ⇒市がパニックに陥る事件が起こる ということが淡々と描かれているだけである。 一気に読めるのは良いところではあるのだけれど…。 また、主役とも言える連中はラブクラフトの「闇に囁くもの」に出てくる蟹状の異星生物である。 ラブクラフトファンからすると、何故この手の事件を起こすのが例のカニなのか疑問に感じる。 連中の目的を考えてはいけない訳であるが、にしてもトンデモナイ連中がもっと沢山いるのが、 クトゥルー神話のいいところでもある。手垢のついてないカニにしてみました的チョイスに感じられる。 (ウミユリ状でも良かったし、円錐状の彼らなどのほうがサーバー施設を使用するのに合っているかもしれない。) また、ファンで無い人が読んだ場合にも、SF「スピーシーズ」より酷い出来かもしれない、といった感じの侵略モノであった。 やはり「秘神界」を読んでいない為なのか…。「崑崙の女王」はもうちょっと面白かったような…。 もう少し夜刀浦市そのものについて掘り下げてほしかった。 繰り返すが内容的には中短編小説といったところ。
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