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ひたすらシビアにそれぞれの立場・思想理念を描き出し、決して
描写が一方的で独り善がりなものにならない。また、人の手に余るような、
超越した美しさを持つものを端整に描写する筆力があります。
想像を絶する過酷な状況に追い込まれた主人公永岡も、超越した
美しさを持つパスキム美術、弥勒が心の拠り所になっていたんでしょうか。
このあたりこの人らしい作風ですね。
文体も美しく読みやすいのに重厚感があり、しばしばハッとする描写に出会います。
読んでる間はめまぐるしく自分の価値観が揺らいでいくし、
読後は救いや信仰、人の死について多少泥沼思考にハマりました(笑)
ラストに拍子抜けという人もいると思いますが、個人的には
これがベストな終わり方と思います。篠田作品では一番好きです。
深いテーマを押し付けがましくなく、面白く読ませてくれる傑作。
ヒマラヤの(架空の)小国でクーデターが起こり、体制はあたかもカンボジアのポルポト時代のようになってしまう。だが、鎖国状態、しかもヒマラヤの小国であるため、何のニュースにもなりません。学芸員である主人公は、その国民ではなく、その国の仏教美術が大切であるがためにその小国に潜入し、美術品を国外に持ち出そうとし、そして、囚われ、待っていたのは想像を絶する労働と飢餓の状態だった。
だが、ここでふと私が思ったのは、アフガニスタンのことです。9.11以前あの見捨てられた国に、世界が関心を向けたのは、タリバンがバーミヤンの石仏を爆破すると宣言したときだけでした。世界はそこに住む人間ではなく、命のない石仏に対して金を出すから爆破はやめるよう迫った。この私たちの行為は、この作品の主人公が「美術品が心配なのだ」とはっきり言うのとどこが違うでしょうか?主人公を責めることも憐れむことも私にはできません。
ここに描かれていることがすべて虚構であると言える人間は果たしているでしょうか。この本は、今までの自分への問いかけとも言える一冊です。
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